2023年(第24回コンクール)NIFC賞受賞 吉原 佳奈さん[2023年8月渡航]

はじめに

8月23日から5日間、ポーランドにて素晴らしい経験をさせていただきました。

このような貴重な機会をいただけたことに心から感謝申し上げます。実際にショパンが生きた場所で何を感じたのか、充実したポーランドでの日々をお伝えできたらと思います。

1日目・2日目

早朝、ワルシャワ・ショパン空港に到着し、そこから車で1時間程の自然豊かな郊外Radziejowiceへ。

最初の2日間は「第10回若いピアニストのための国際マスタークラス」に参加しました。あちこちから聞こえてくる鳥のさえずり、湖のきらめき、目に映るものすべてが新鮮で心が躍りました。

私はスケジュールの都合で途中参加でしたが、マスタークラスの最後の2日間で2回、Janusz Olejniczak先生のレッスンを受講させていただきました。フレーズの感じ方や歌い方、そしてポーランド特有のリズム感。実際にその土地の空気を感じながらのレッスンは音楽が自然に体に入ってくるような、日本で勉強するのとはまた違った感覚があり、とても充実した時間でした。

そして印象的だったのが練習室。日本で練習室というと狭い無機質な空間にピアノが入れられているような印象ですが、ここは天井も高く開放的で絵画などの美術品に囲まれたとても素敵な空間。こんなところで毎日練習できたらどんなに幸せだろう、より大きな音楽を奏でることができそうだなと感じました。

また、レッスン聴講やコンサート鑑賞、世界各国の言葉が飛び交うなかでの食事の時間は私にとってとても刺激的なものでした。

マスタークラスが行われたRadziejowice

マスタークラスでの練習室

3日目

2日目の夜にワルシャワへ移動し、ここからはInstituteのAleksandraさんがサポートをしてくださいました。

3日目の朝からは早速ワルシャワの街を散策。

まずはショパン博物館。ガイドさんの案内で、ショパンが弾いていたピアノや直筆の手紙などの展示品とともに彼の人生を辿りました。ショパンは本当にここで生きていたのだということを実感し、まるで今そこに彼がいるような不思議な感覚にとらわれました。

博物館のあとは、ワルシャワの街を案内していただき、ショパンが住んでいた建物など、ゆかりの地を巡りました。その中でも一番印象的だったのが聖十字架協会。ショパンの心臓が眠っている教会です。ヨーロッパの人々にとって、オルガンの響きや教会音楽は当たり前に存在するものなのだと身に染みて感じ、今私たちが取り組んでいる西洋音楽はこのような日常から生まれたのだと再認識しました。ここで感じた気持ちや空気はずっと覚えていたいなと思います。

この日の昼食はAleksandraさんとポーランド料理をいただきました。ポーランド語は読んでも見当がつかず英語のメニューがないお店では注文も一苦労なので、とても心強かったです。

そして午後はピリオド楽器のレクチャーを受けました。Chopin Instituteでマンツーマンのレクチャー、なんと贅沢な時間なのでしょう!普段大学で勉強していても頻繁に触れるものではないので、あのピリオド楽器がたくさん並んだ部屋は夢のような空間でした。

夜は大劇場でオペラを鑑賞し、朝から夜まで吸収することの多い充実した一日でした。

ショパンの心臓が眠る聖十字架教会

ピリオド楽器のレクチャー

4日目

ワルシャワの街にも慣れてきて、朝はパン屋さんへ。優雅に一人で朝食を済ませた後、この日は最も楽しみにしていたショパンの生家ジェラゾヴァ・ヴォラでのリサイタル。二度とないようなこの機会、大切に味わいたい、楽しみたいと思いながら、聴いてくださっている皆様へ、そしてこれまで支えてくださった方々への感謝の気持ちを込めて演奏しました。ここでの2公演は一生忘れられない宝物になりました。温かいお客様に囲まれ、多くの方々に聴いていただけたこと、演奏後もたくさんの方が声をかけてくださったこと、本当に嬉しかったです。

そしてその夜ワルシャワに戻り、ポーランドに留学していた先輩に教えてもらった日本食のお店で夕食をとりました。Zaru Ebi(天ざるうどん)おいしかったです。

おなかがいっぱいになった後は初めてのフィルハーモニーホールへ。ずっと配信で見ていたホールに自分がいるのは不思議な感覚でした。ケイト・リウ、エリック・ルー、ダン・タイ・ソンを一度に聴けるなんて日本では考えられないような豪華すぎるコンサートで本当に幸せな時間でした。

ジェラゾヴァ・ヴォラでのリサイタル

ワルシャワフィルハーモニーホール

5日目

この日はまずAleksandraさんとワジェンキ公園でのコンサートへ。

ポーランドの若手ピアニストMateusz Dubielのリサイタルで、猛暑の中でも多くの人が聴きに来られていました。演奏会というよりはピクニックの一環のようで、レジャーシートを敷いて各々リラックスしながら音楽を楽しんでいる様子が印象的でした。

そして最後は世界遺産にも登録されている旧市街を巡り、ワルシャワが歩んできた破壊と再生の歴史を肌で感じることができました。

ワジェンキ公園のショパンコンサート

ワジェンキ公園にて

最後に

今回このような素晴らしい経験をさせていただき、私にとって生涯忘れられない大きな財産となりました。また、今の時代を生きる私たちが、ショパンの作品を演奏できることへの感謝、それと同時に責任を強く感じました。

今回の旅で得た感覚を大切に、これからも真摯に音楽と向き合っていきたいと思います。

最後になりましたが、アイエムシー音楽出版ならびにChopin Instituteの皆様に心より感謝申し上げます。